

『からかい上手の高木さん』というアニメを何の気なしにチョロチョロ観ている。中学生の高木さん(女性)と西片くん(男性)のギャグラブコメディである。これは、西片くんが隣の席に座る高木さんにいつも「からかわれる」という内容で、西片くんも高木さんにやり返そうとするが、最後は高木さんにやり込められる(からかい返される)。というか、西片くんは高木さんを「からかおう」とするのだが、「からかい」にすら至っていない(高木さんにはお見通し)。最近の回は高木さんに「からかい」返すというより、もうすでに高木さんに手玉にとられてまくって、客観的には微笑ましいカップルがイチャコラしているだけである。
まあそれだけなら何てことのないラブコメディなのだが、ひとつだけ怖い「からかい」があった。その前にちょっと感想を言うと、普段は、西片くんがマヌケすぎることもあって、そんなんに引っかっかるなよとも思うのだが、自分の中学生時代を思い起こすと、これはいたしかたない。ふつうの男子中学生は女子がこんな具合にちょっかいを掛けてきたら、まあ勘違いするよなってかんじになるかなぁ。しかし、西片くんはまだはっきりと「高木さんって、自分に気があるのでは?」と確信していないようだが、もし少しでもそう思ったのなら立場は逆転思想。そして、ここで怖いところだが、基本はかわいい「からかい」なのだが、一度だけ掃除当番を任せられた西片くんのことを、高木さんが「掃除用具入れ」の中で待ち伏せていたことがあり、西片くんが驚いた様子を笑っていたのだが、私はもし気になる女子に中学生時にそんなことをされたら、おそらく一瞬にして熱が冷めるだろう。じっと用具入れで待っている高木さんの姿を思い浮かべると、なんか怖さを感じた。それ以来高木さんが何か企んでそうで(企んでるが)、彼女の瞳に狂気を見るようになった(錯覚)。
『100%片想い』という劇中少女漫画が出てくるが、ここでいう「片想い」とはだれのだれへの想いなのだろう。高木さんが西片くんに「(西)片(へ)想い」なのか、実は西片くんだけが高木さんのことを気にしているという状態、つまり「(西)片(だけの)想い」なのか(まあ、でも、高木さんが西片くんを好きであるというのは間違いなさそうふぁから、両想いか)。もし後者なら、この漫画は全部西片くんの妄想ということになるが。この少女漫画を読んでいることを西片くんは高木さんに知られたくないということからすると、西片くんがだれかに「片想い」をしていることを当の相手に知られたくないという無意識の抵抗だと考えても(西片くんは高木さんの恋心を知らない)、恋心を含めてすべては高木さんの手のひらの上だということになる。それとも、やけに『100%片想い』にこだわる高木さんは、西片に自分の想いをそれとなく伝えているのか。
ここでちょっと作品のウィキペディアをみてみたら、どうやら将来の展開がどうなるかスピンオフとして漫画化されているよう。二人がどうなるかはネタバレになるのでここでは書かないが、そこまで至る前に、すなわち学生時代にふたりが最終的にどうなるのかを暇だから考えてみて、以下に簡単なやり取りとして会話にしてみた。
《高木さん》:ねぇどうしたの、西片?こんなところに呼び出して。
《西片くん》:いや……あ……あのさぁ。
《高木さん》:うん、どうしたのかなぁ、顔、真っ赤だよ。
《西片くん》:え……ええと……その、高木さんはさぁ……
《高木さん》:わたしがどうしたの?
《西片くん》:いや……違くて、俺は……実は……高木さんのことが……
《高木さん》:わたしのことが、ってねぇ、ほんとに汗がすごいよ。暑いの?
《西片くん》:暑くないよ、っていうか、それはどうでもよくて、実は!
《高木さん》:実は?
《西片くん》:実は、俺は高木さんのことが、suki……
《高木さん》:えっ?ちょっと何言ってるのか聞こえないけど。ほんと顔が変だよ、暑いの?
《西片くん》:いや、あついけどさ、ってきちんと言うけど、俺は本当は高木さんのことが……
《高木さん》:もしかして、わたしのことが好きだって言うの?
《西片くん》:へっ、いや、その……
《高木さん》:じゃあ、違うの?
《西片くん》:いや、違わないけど……って、あれ、それ俺の方から言うつもりだったのに……
《高木さん》:へぇ、そうなんだ。西片って、わたしのことが好きなんだ。
《西片くん》:何だよ悪い。そうだよ、高木さんのことが好きなの。
《高木さん》:ふうん、で?
《西片くん》:えっ?
《高木さん》:うん、それで、どうしたいのかな、西片は?
《西片くん》:どうしたいって、その……いろいろと……
《高木さん》:いろいろと、わたしと一緒に学校から帰りたいとか?
《西片くん》:いや、それはしてるでしょ。そうじゃなくて。
《高木さん》:じゃあ、一緒の高校行きたいとか?
《西片くん》:もちろんそれもあるけど。
《高木さん》:それじゃあ、勉強頑張らないとね。
《西片くん》:うんまあ、それはいいとして……ええと……俺と、付き合ってほしいんだけど……。
《高木さん》:うん、どこか行くって、それはいつもしてるよね。
《西片くん》:そうじゃなくて、って、いつまでこのやり取りするのさぁ。
《高木さん》:アハハ、ごめんね。で、付き合ってどうするの?
《西片くん》:それはさあ、あの中井くんたちみたいに付き合うってこと。
《高木さん》:そうなんだ、じゃあ、恋人みたいになるってこと?
《西片くん》:いや、その、そこまでは言わないけど、でも、そんなかんじかなぁ。
《高木さん》:ふうん、そうか、そうなんだ。じゃあ、答えるけど……
《西片くん》:う……うん。
《高木さん》:答えは……わたしは、西片のこと、好きじゃないんだ。
《西片くん》:えっ……高木さんは俺のこと好きじゃないの?
《高木さん》:うん、好きじゃない。
《西片くん》:じゃあ、きらいなの?
《高木さん》:きらいではないけど、好きじゃない。
《西片くん》:ええ、そんなぁ。高木さん、俺のこと好きじゃなかったの。みんな、そうだって言ってくれたのに。
《高木さん》:好きじゃないよ、でもね……
《西片くん》:でも……?
《高木さん》:わたしは、実は、西片のこと、大好きなんだ。
《西片くん》:えっ?だ……だいすき?
《高木さん》:そう、好きじゃなくて、だいすき……フフフ、どうしたの西片。顔、真っ青だよ、寒いの?
《西片くん》:寒くないよ、って言うか、何それ、ああ、また高木さんにしてやれれた、って、俺の方からきちんと好きって言うつもりだったのに。
《高木さん》:アハハ、やっぱり西片っておもしろいよね。
とまあ、ここまで書いていてアホらしくなってきたので、ここでやめます。原作を読んでないので、もっと関係は深まってるかもしれませんが、まあ、中学時代にこんな女子がいたらちょっといやかもしれんけどうらやましくはあるが、勘違いした男子が玉砕するってのが現実なんだがなぁ。
(成城比丘太郎)

