もともとseesaaブログで始めた「怖い本」ですが、独自ドメイン「http://scarybookplus.com/」に移行しました。最近、スマホの広告がウザいとの共同制作者の移行でこのサイトの更新はストップしていますので、ぜひ本サイトへ遊びに来てください。こちらで更新していた内容も本サイトで更新予定です。

2016年12月11日

隣の家の少女(ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー)



・「少女虐待」という強烈なモチーフ

・悪趣味かつグロテスク、ある意味期待通り

・興味本位で読むのはお勧めできない

おススメ度:★★★☆☆



「読後感が最悪の小説」のベスト1に選ばれていることもある、実話をヒントにした少女虐待を描いた小説。残酷小説が苦手な方、また、人間の「悪意」について免疫が無い状態で読むとショックを受けると思うので、興味本位で読むことはあまりお薦めできない。

普通に読むと人間の残酷性・悪意をほとんど救い無く描き、深い「絶望」がテーマとして感じると思うが、虐待を加える母親の精神描写が秀逸。序盤では愛すべき「不良ママ」として描かれている人物が、虐待の度を深めるに従って、自らの精神を崩壊させていく様は圧巻だ。同様に「近所の悪ガキ」が、自らの行為によって残酷な悪鬼に堕してくのだが、対して虐待を加えられる少女は小説の最後まで完全に人間性を失うことがない。この小説が、只の悪辣な鬼畜小説にならずに根強い人気を維持している要因は、その辺りにあるのではないかと思う。

とはいえ、虐待内容は性的なものも含む残酷でグロテスクなもの。そういうものを期待するのであれば、満足できるであろうし、少しでも嫌悪を感じるのであれば、スルーする方が賢明だ。

人間の残酷性を興味深く知るだけでなく、誰にでも訪れる可能性のある「人生のバットエンド」の例として読んでみると、また違った味があるようにも思う。






隣の家の少女 [ ジャック・ケッチャム ]



posted by 北川商店 at 17:26| Comment(0) | ★★★☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぼっけえ、きょうてえ(岩井志麻子/角川ホラー文庫)



・短編だが、グロテスクでゾッと来る恐怖感

・巧みな岡山弁での語りが魅力的

・表題作以外はいま一つ

おススメ度:★★★★☆


あちこちの書評で「怖いホラー小説」の話題になると、必ず選ばれているのが、この「ぼっけえ、きょうてえ」だ。意味は「凄く怖い」ということらしいが、表題作に関しては、タイトル通りの逸品だ。

怖さにも色々種類があるが、本作、感覚的・視覚的な恐怖やグロテスクな表現でジワジワ追い詰められて、最後にいきなり「気持ち」を突き刺されるようなそんな恐怖を味わえる。この鮮烈さは特筆物で、鋭い刃物で切りつけられるよう。何を書いてもネタバレになるので、まずは一読を。

本作品は色々現代的なアレンジがされているが、骨子は伝統的な怪談話だ。岡山弁での語りが巧みで、作品に飲まれてしまう。ただ、この小説には4篇の短編小説が収録されているが、表題作に比べるとその他3篇は少々劣る印象だ。

どこかで「もうこの本を読みたくないどころか、表紙に触りたくもない」という感想を読んだが、「できれば忘れてしまいたいような怖い話」なんて中々見つからないと思う。ホラーファン必読の一冊。





ぼっけえ、きょうてえ【電子書籍】[ 岩井 志麻子 ]

ラベル:岩井志麻子 怪談
posted by 北川商店 at 13:54| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

呪怨(大石圭/角川ホラー文庫)



・設定は魅力的だが、リアリティは薄い。

・映像の文章化に疑問を感じる

・小説単体としてはお薦めできない。

おススメ度:★☆☆☆☆


2003年公開の有名なホラー映画のノベライズ版。「介護のボランティアで訪れた一軒家で女子大生が体験する恐怖」という設定が興味深かったので、手に取ってみたが「文字で映画の恐怖表現を再現するのは相当辛い」というのが率直な感想だ。

一例だけ挙げると、どこからともなく猫の声が聞こえるシーンの描写は「ニャ――オ――」。

当たり前だが優れたホラー映画のノベライズ版が、優れたホラー小説ではないということだ。もちろん映画の素晴らしいノベライズ版は存在するとは思うし、映画の追体験用のアイテムとしては有効なのかもしれない。そもそも、もとの映画を知らない人間が小説を読みのが間違っている気もする。

ただ、それでもあまりにも「霊が出る」ことが当たり前なこととして描かれていることが不満だ。ホラー小説を読んでいてこんなことを言うのも気が引けるが、いきなり霊が出てきたらそれはもうホラーではなくギャグだ。そういえば、ダウンタウンの松本人志や漫画家のいがらしみきおが「ギャグとホラーは紙一重」と、言っていた気がする。そういう意味では楽しめないことはない、のかも知れない。素直に映画を観よう。






posted by 北川商店 at 13:41| Comment(0) | ★☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハサミ男(殊能将之/講談社文庫)


・ミステリ寄りのトリッキーなサスペンス

・残酷描写が苦手な方も大丈夫

・面白いが癖が強く、万人には薦められない

おススメ度:★★☆☆☆


少女の首にハサミを突き立てるという「ハサミ男」による残虐な連続殺人が起こった。物語の主人公はこの「ハサミ男」が、自分の犯罪を真似た殺人に偶然出くわすことから始まる。「ハサミ男」は、はからずも真犯人の捜査に乗り出すが……。大まかなストーリーは上記の通りで、終盤にドンデン返しが仕込んである。面白いし引き込まれるが、これは賛否両論あると思う。

この作品は冒頭から連続殺人犯が主役であることが知らされる。それもどうやら少々精神を病んでいる感じである。殺人犯が自分の殺人を真似た殺人に出くわすというのは面白いアイデアだと思うが、弊害として感情移入しにくいのである。話の引き込み方がうまいので、投げ出したくなったりはしないが、やや没入度が落ちてしまう。

タイトルがショッキングだが、思ったほど残酷でもなく、ジャンルとしては正統派のミステリに当たると思う。注意して読んでいると、後でなるほどと思うことも多く、そういう意味では非常に良く出来ているし、警察の面々など魅力的なキャラクターも多い。ただ、それらが好きかどうかと聞かれると微妙だ。

作中に他のミステリの引用が多く登場するのだが、こういうのは引用だと分からないように引用するのが上品な手法だと思う。作中、あからさまに「え、こういうの知らないんですか」と登場人物がほかの人に話すが、それを知らない読者は間接的に馬鹿にされているような気もする。そもそも推理小説に他の推理小説の小ネタが登場するのは、いわゆる内輪ネタと呼ばれるものではないのかという疑問も感じる。

本作は作者のトリックに挑戦したいというミステリファンの方にはお薦め、逆にホラーサスペンスとして楽しみたい方には微妙なところ、といった感じだ。


posted by 北川商店 at 13:06| Comment(0) | ★★☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

野火(大岡昇平/新潮文庫)



・極限のサバイバルを描く一級のサスペンス

・洗練された読みやすい文章

・哲学的な世界観に圧倒される

おススメ度:★★★★☆

敗戦間近のフィリピンの戦線で、肺病を患った下級兵卒・田村の厳しい逃走生活を描く。逃走と書いたが、ほとんど避けきれない死と隣り合わせの状態で、田村は迷走する。極限の飢餓状態の中での異様な体験を経て、田村はどう変わっていくのか。戦記文学の傑作だが、素直に「読んで面白い」内容だ。また、極めて不謹慎だがホラー・サスペンスとしても読める。

文学にありがちな読みにくさは全くなく、圧倒的に読みやすいのである。頭の中は、あっという間に現代から、戦中のフィリピンへ移動する。描かれている情景は、過酷な前線兵士の敗走である。しかし、その一つひとつの文章が磨かれていて非常に正確だ。

例えば、ある村を訪れると、村人から叩き殺された日本兵の死体が転がっていて、しかも腐ってガスで膨らんでいる。これらの描写が克明に描かれるのであるが、作者は無闇に煽ったりしない。むしろあっさりと正確に描いている。しかし、これがジワジワ効いて来る。なまじ読み易いだけに、異常な世界にいる兵士の心境に次第にシンクロしていく。これがかなり怖い。

作品中では二つの視点があると感じた。主人公・田村のフィリピンでのサバイバルを描く現実面の視点と、田村の内面の変化を作者の哲学を軸に描く視点だ。言うまでもなく、この二つの視点は互いに深く交錯している。極限状態の描写も怖いが、それ以上に内面の変化はかなりの圧迫感を持って読者に迫ってくる。次第に壊れていく田村の内面、その中で次第に深まっていく人間・田村の葛藤が圧巻だ。

かつて小林多喜二の「蟹工船」を読んだ時も、同様の文章の確かさ、情景の恐ろしさ、人間の描写の鋭さを感じた。イデオロギーを排して、小説としても面白いのである。ただ、例えば中学生の課題図書として読まされたらどうだろう。多分「暗い鬱陶しい小説」だと思ったはずだ。こういった作品は自ら進んで読むときに、本来持っている輝きを放つと思う。取っ掛かりは何であれ、こんな面白い「一級のサバイバルサスペンス」を読まないのは勿体ないと思う。



野火改版 [ 大岡昇平 ]









posted by 北川商店 at 12:49| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黒い家(貴志裕介/角川ホラー文庫)



・「やっぱり生きた人間が一番怖い」をたっぷり楽しめる

・リアルな設定と抑えた文章

・スリリングな展開で抜群の没入感

おススメ度:★★★★☆


保険会社に支払査定主任として勤める主人公とその顧客である不気味な登場人物との関りが、現実感たっぷりに描かれる貴志裕介氏の傑作ホラー。作品世界への吸引力も強烈で、読み進むにつれまるでグイグイ引き込まれていく。「ホラー小説」って面白い、と素直に言える一冊である。

著者の体験に基づく保険会社の裏側も非常に興味深く、普段知ることのない世界が体験できる。いかにも「ありそう」なクレームや狂ったお客に、自分は「保険会社に勤めなくてよかった」と、つくづく思う。作中に登場する「取り立て屋」もその背景に広がる黒い社会を想像させて楽しい。そして、その危ない世界を安全な場所から体験できるという、ある種の優越感。

ところが、作品を読み終わると自分もまたこの「黒い家」のある世界に住んでいるということを実感させられる。身近なところにもこの手の憎悪や醜い欲望はあるのではないか、いや、本当は自分の中にもあるのではないか、と感じさせられるのが本当に怖い。

ただ、作品が発表されたのが1997年であり、どうしても作中の社会の描写が古く感じるだろう。とくに若い読者の方にはピンとこない描写も多いのではないかと思う。ただ、それを差し引いても面白いお話であることは変わらない。怖い話は読みたいけど、幽霊や超自然的な存在が苦手な方にも最適な作品。

posted by 北川商店 at 12:12| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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