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2017年01月31日

岡山女(岩井志麻子/角川ホラー文庫) ※ネタバレなし



・霊が見られる霊能士の短編小説集

・幻想的な作風で怖くない

・読後感は爽やかだが求めてたものとは違う

おススメ度:★★☆☆☆

日本人の皮膚感覚を逆なでするようなデビュー作「ぼっけえ、きょうてえ」が、極めてよくできた不気味な怪談だとすれば、本作品は、虚実と現実が交錯する幻想小説だ。「愛人に切り付けられ片目を失い、霊が見られるようになった女霊能士」という設定こそ猟奇的だが、全体的には明治期の岡山のちょっと奇妙な事件を描いた短編連作小説になっている。

前述の「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山弁の語り口に引き込まれ、最後の最期で鳥肌が立つような感覚を味わいましたが、こちらは最後までクール。霊が日常的に出てくるところなど、むしろ漫画的だと思う。読後感も爽やかというか不思議な感じがして、文学的とも言えるような気もする。

とはいえ、ほとんどの人は作者特有の「怖い話」を期待していると思うので、肩透かしを食らい、満足度が必要以上に低くなるだろう。逆に言えば、ホラーや怪談だと思わなければ、そこそこ興味深く読めるのではないだろうか。

求めていたものではないが、これはこれでありかも、と言うのが率直な感想だ。





岡山女【電子書籍】[ 岩井 志麻子 ]







posted by 北川商店 at 08:45| ★★☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

ザ・スタンド(1) (スティーヴン・キング/文春文庫) 〜あらすじとおススメ度



・強力なインフルエンザの蔓延を描くパンデミック系

・様々な登場人物が入り乱れる群像劇

・全五巻中の一巻。導入は入り込み辛いが、この先は面白い

おススメ度:★★★★☆


強力なインフルエンザ・ウイルス<スーパーフルー>が実験施設から漏洩したことで、アメリカに住む人々が凄まじい勢いで死んでいく。いわゆるパンデミック系の物語が展開する。登場人物は妊娠した女子学生や、突然売れたロックシンガー、貧乏で寡黙な男など、何もなければ彼らなりの人生を送っていたと思われる平凡な人々が多い。原初の発行が1978年なので、近年流行していたアウトブレイク(そしてゾンビ化)する作品の原型のような作品だ。ただしゾンビ化はしないので、その手のゾンビ小説ではない。キング作品でも初期に当たる作品で、今でも人気の高く、前書きで「他の作品を書いても、かならずこの作品のことを聞かれる」というぼやき(?)がある。

正直に言って、それほどキング作品に詳しいわけではないが、素晴らしい出来の小説だと思う。ホラーとしての怖さも十分だ。非常に長い作品で、文庫版だとたっぷり5冊分の分量がある。傑作であること、一冊ごとに大きく展開が変わることを考えて、巻数を追って順番に紹介してみたい。

一巻のあらすじは、作者による作品解説から始める。この作品が追補版であることが記されている。その後、実にじっくりとインフルエンザが人々を蝕んでいく様子が、キング独特の文体で詳細に描写される。「嫌な予感」が確実に現実になる恐怖。家族が、友達が、近所の住人がもし、不治のインフルエンザに感染したらどうなるかが、手抜きなしにたっぷり描かれる。所々にある暴力描写も生々しい。

序盤は主役となる登場人物たちの紹介も兼ねて、物語の視点が次々入れ替わるので非常に読みにくく感じるし、感情移入も難しく思うかも知れない。丁寧にそれぞれの場所で起こっている、それぞれの人生の断片に避けがたい破滅が侵入してくる様子、それを止めようとする人々の葛藤が描ける。のちの「大ボス」も少しだけ出てくる。

一巻だけをとれば、まさに全体のプロローグでこれだけでは全体の評価はできないし、展開は決して早くないので、もどかしく感じるかもしれない。ただ、この先には、この作品でしか味わえないであろう恐怖と悲劇、そししてあえて言えば「感動」が詰まっているので、ぜひ、ゆっくりと読んで欲しい作品だ。一巻では特にシンガーのラリーがお気に入り。逆に妊娠した女学生のフラニーはイマイチ好きになれなかった。

ただのパンデミック物にはない、不気味な「世界の終わり」にぜひ、あなたも浸ってみてほしい。





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posted by 北川商店 at 09:24| ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

硝子のハンマー(貴志祐介/角川書店) 〜簡単なあらすじ・おススメ度※ネタバレなし



・オーソドックスな密室物ミステリ

・ホラー要素はほぼ皆無。主役たちの推理を楽しむ。

・女性キャラクターへの共感度はは低い

おススメ度:★★★☆☆


物語のジャンルはいわゆる密室物のミステリ。あらすじとしては、暗証や監視カメラ、監視する人間など、厳戒なセキュリティ網を突破し、ある会社の社長が「撲殺」される、その凶器と殺害方法を探るオーソドックスな展開だ。この作品の特徴は、主人公役が女性弁護士と鍵など知識に詳しい「防犯コンサルタント」のコンビというところか。

作者はホラー・サスペンスを得意としているが、今回は全くホラー要素のない「密室もの」と呼ばれる推理小説だ。個人的には、いわゆる「本格」と呼ばれるミステリーは苦手だが、密室トリックを貴志流の味付けで一気に読ませてくれる。

ポイントは、「防犯探偵」「奇抜な殺害方法」「犯人側の叙述」だろうか。詳しく書くとネタバレになるので控えるが、防犯のノウハウ部分だけでも面白く読める。ただ、犯人側の事情を詳しく描いているのが作者のこだわりだろうが、それでもちょっと中途半端にも思えるのが残念。また、探偵のキャラクターは面白いが、ややステレオタイプなキャラクター設定の女性キャラに好感が持てない。

貴志裕介氏の特徴として「読みやすい文章」「面白いテーマ設定」「しっかりとした取材」「ちょっとオタク風味」にあると思う。特に「気がつくと100ページ読んでいた」という筆力は抜群だ。テーマの面白さとあいまって、一度読み始めると止まらない作品がほとんど。

そういった他の作品と比べると、没入感はいまひとつだが、それでも200ページを越えたあたりから、最後まで一気読みしてしまった。作者の他の作品をひとつでも読んでいて、の作風に惹かれる所があるなら読んで損はないだろう。もし、一作も読んでないのなら、「黒い家」や「新世界より」の方がよりおススメだ。

蛇足だが、防犯探偵の姿の描写が「繊細で色白」と言う描写にもかかわらず、途中から柄本明の顔が浮かんで仕方なかった。苗字の読み方が同じだけなのだが……。





硝子のハンマー [ 貴志祐介 ]




posted by 北川商店 at 08:29| ★★★☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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