もともとseesaaブログで始めた「怖い本」ですが、独自ドメイン「http://scarybookplus.com/」に移行しました。最近、スマホの広告がウザいとの共同制作者の移行でこのサイトの更新はストップしていますので、ぜひ本サイトへ遊びに来てください。こちらで更新していた内容も本サイトで更新予定です。

2017年01月22日

霧が晴れた時(小松左京/角川文庫)



・SF要素のあるホラー小説集

・異常だが、面白く説得力のある設定が多い

・特に「くだんのはは」がオススメ

おススメ度:★★★☆☆


本作品は、SFホラーとでも言うべきジャンルで、伝統的な怪異譚にSF的な要素がミックスされた短編小説集。SF的な味付けがあるとはいえ、科学的・論理的に怪異が説明されるわけではなく、不思議な力が「ある」ことが前提の作品だ。

内容に関しては純粋に設定が面白いのと、異常な設定常でも、そのベースに人間の持つ根源的恐怖を見据えているような深さがる(「すぐそこ」「骨」など)。また、戦中派らしい戦争の恐怖も織り込まれていて、こちらの方が個人的には怖かった(「くだんのはは」「召集令状」)。特に、「くだんのはは」は、戦争・空襲・広島・秘密の奥座敷・血の包帯・異臭など、とにかく不気味な設定で、この一編を読むためにこの本を買ってもいいのでは、と思わされるほどだ。

短編集なので、作品の質はバラバラだが、毎日少しずつ楽しむにはぴったりだ。ぜひ「くだんのはは」だけでも手に取って読んでみてほしい。これだけなら、評価をもう一つ上げたい。

本書の紹介とは直接関係ないが、私は中学生の頃はどちらかというとオカルト信奉者で、自分でピラミッドパワーなるものを試したり、怪しい呪文の本を読んだり、色々と痛い行動を取っていたのだが、今改めて振り返ってみると「超常的な力はない」という結論だ。また、幽霊・化け物・妖怪の類についても「いない」と思っている。ただし、それぞれの個人や状況に限れば「見える」ことは十分にあるし、正しいやり方の呪いも十分に「効く」とも思っている。

こんなブログを書いているのも、今でも幽霊やお化けが「ひょっとしたらいるかも」と思えるぐらい「上手く騙して欲しい」という思いを持っているからだろう。できるなら本書にあるような怪異も一度も見てみたい。





霧が晴れた時 自選恐怖小説集【電子書籍】[ 小松 左京 ]






ラベル:小松左京 短編集
posted by 北川商店 at 14:04| Comment(0) | ★★★☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

Q&A(恩田陸/幻冬社)



・タイトル通り「質問」と「答え」だけで構成される小説

・正体不明の大惨事が多数の視点から描かれる

・オチは弱いがゾッとする恐怖を味わえる

おススメ度:★★★★☆

作者のデビュー作「六番目の小夜子」に続いての紹介となる本作は、あるショッピングセンターで起こった大惨事(死者69名、負傷者116名)をめぐる物語だが、タイトル通りQ&A形式(質問とその答え)で進み、一般的な小説にある場面描写などがない。

とはいえ、それほどトリッキーな印象もなく「正体不明の大惨事」という興味深いテーマがあるので、序盤から引き込まれる。次第に質問者と回答者も変化すが、一つひとつのシーンが短編小説風にラストに落ちがつくので、単調な印象もない。

物語が動くのは中盤からで、ネタバレになるので詳しくは書けないが、通常のサスペンスと逆方向に物語が転回する。この「Q&A」は物語が収束するのではなく、拡大していく。読んでいる時はそれほど分からなかったのだが、読み終えて振り返ってみると、作者の狙いがよく分かった。

一言で言えば、一つの惨事から拡大再生産されていく恐怖、これこそ、この小説のテーマかなと思う。これは現実社会にある恐怖に近く「何となく不安」な気持ちがどんどん積み重なっていくようで、新鮮な感覚だった。

惜しいのはラスト、結末が弱いと感じるし、あの設定は必要なかったようにも思う。どちらにしても、水準以上の「ぞっとするような恐怖」を味わえるので、一度手にとってみてはどうだろうか。





Q&A【電子書籍】[ 恩田陸 ]





posted by 北川商店 at 16:09| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月20日

模倣犯 (宮部みゆき/新潮文庫)



・圧倒的な「読ませる力」を持った小説

・連続誘拐事件をテーマにした宮部みゆき最大級の力作

・深遠なテーマと深い感動を保証する


おススメ度:★★★★★

「なんだこれは?」と、第1部の途中で感じた。「これはヤバイ」とも。100Pを超えた途端、物語が物凄いスピードで加速し始め、一部ラストで放心した。決してグロテスクではないのに「ここまで書いていいのか」と、寒気を覚えるような描写。同時に、読者を飽きさせず、まるで小刻みに爆発して加速していくような場面場面の面白さはエンターテイメントとしても最大級の面白さだった。しかし、ここまでなら「火車」と同じ。第2部から、宮部氏は未知の領域に驀進し始める。

物語は、連続婦女誘拐殺人事件が、警察・被害者・犯人の側から群像的に描かれる。しかし、群像と言ってもそれぞれのパートで普通の本一冊分位はあるので、同じ物語が複数の視点で描かれていると言ったほうがいいかもしれない。とにかく、この物量には圧倒される。

2部では犯人の生い立ちから犯行までが描かれる。正直、読み始めてみると一部に比べ(時間軸も戻るので)もどかしさを感じた。しかし、一部で加速した「読みたい気持ち」は簡単には止まらない。そして、徐々に練り上げられていくクライマックスはやはり圧巻。人間の光と影が鮮やかに描かれ、読み進めるのが勿体ないくらいスリリングな「対決」シーンが描かれる。この辺の物語の「タメ」と放出のコントロールが見事だ。

3部は完結編とも言える内容で、普通なら2部で終わっているお話がさらに一回転する。そして明かされる模倣犯の意味。それは表面的な意味合いを越えて、犯人を貫くある一撃になります。3部には展開的に物足りない部分もあるが、とにかくページを繰る手が止まらないのは同じ。

完全なエンターテイメント作品でありながら、非常に深遠なテーマに深く切り込んでいる点で稀有な作品だと思う。いわく「悪」とは何か。純粋な「人間の悪意」とは何なのか。これは現代日本を覆っている言葉にできない「不幸」と同じ源を持つものと思えてなりません。作者は「他者とは違うと思いたい英雄願望」だと看破していましたが、ヒトラーやポルポト、ジョン・レノンを射殺した男や麻原彰晃など、確かに人類を揺るがした悪の根源とはこんなものかも知れない。ひょっとすると、人間は人と違うところではなく、同じ所を探すべきなのかも知れないとも思った。もっと根源的な共通点を。

最初の設定は重く感じますが、その先に底の見えない広大な世界が広がっている。軽い読書には向かないが、宮部氏の筆力に身を任せて垣間見る人間の邪悪と聖なる部分は全ての人にとって何かしらの意味を持っていると思える。





模倣犯(1) [ 宮部みゆき ]




posted by 北川商店 at 12:00| Comment(0) | ★★★★★ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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