もともとseesaaブログで始めた「怖い本」ですが、独自ドメイン「http://scarybookplus.com/」に移行しました。最近、スマホの広告がウザいとの共同制作者の移行でこのサイトの更新はストップしていますので、ぜひ本サイトへ遊びに来てください。こちらで更新していた内容も本サイトで更新予定です。

2017年01月19日

新世界より(貴志祐介/講談社)



・ホラー要素満載の傑作SFエンターテイメント

・知的ゲーム的な要素も面白い

・残酷描写も多いので注意

おススメ度:★★★★☆


時は未来。人間たちは「呪力」という超能力を手にしていた。その力によって、様々な文化を生み出し、バケネズミという奇怪な化け物まで使役するようになっていた。しかし、「呪力」は世界を破壊するほどの可能性を秘めた力だった。余りに強力な力を得た時、人はいったいどうなってしまうのか? 破壊兵器に限らず、携帯電話から遺伝子操作に至るまで「余りに強力な力」を持った現代人に対する強烈な警告としても読めるSF娯楽大作だ。

この小説の核は世界をひっくり返すことだ。これはSFの常套手段であり、醍醐味でもある。この小説は2回ひっくり返るのだが、最初にひっくり返るまでは長く感じるだろう。ただ、逆転を楽しむためには平和な情景が必要であるのでこれは仕方ない。作者はホラー小説で世に出たこともあって、話が進むにつれてそれ系の描写が加速していく。特に歴代の皇帝の悪行などは、想像すると夢でうなされそうな位だ。この辺から悪趣味全開になるが、ここが分水嶺で、残酷描写に抵抗がなければラストまで一気に読める。

作者はかなりのゲーム好きだと思う。上巻の中盤もそういった知識を生かしたちょっとした戦争シーンになっており、かなり面白い。登場人物はやや類型的だが、敵役のバケネズミの造形には非常に惹かれる。超能力というのはSFとしてはかなり陳腐化したテーマだが、この敵役のおかげで新しい面白さを生んでいると思う。無敵の力に弱点があるというのも、どことなくゲーム的だが。

全体的には文句なく面白いし、読後感も色々考えさせられてただの娯楽小説ではないが、気になったこともある。全体的に粗い感じがするのである。キャラクターの死があっけないことや、超能力の発露の仕方もいまひとつ不明瞭な所もある。これは核となる部分だけに勿体ない。また、回想形式なので「この後、こんな悪いことが起こるとは」という無駄な脅しがかなり多い。余り連発されると白けてしまう。他にも、主役の文章が女性とは思えないほど硬質だとか、青春・エロシーンにリアリティがないとか、面白い小説だけに、細かい不満点が気になったりした。

作者である貴志裕介氏の特徴は、完全な娯楽志向と緻密な展開、そしてかなりのダークな描写である。表面的な残虐描写もそうだが、心理的にも追い詰められる描写が多い。本作は残虐描写にある程度の耐性があるなら、間違いなく読んで損はない傑作だ。ただ、ラストのオチでどうしても引っかかるのは、彼らに出来たのなら、彼ら以上に人間であった以前の時代にも可能だったのではないか? ということだ。とはいえ、最後までノンストップな奇怪な未来世界を堪能できて大満足であった。



 


 


新世界より(上) [ 貴志祐介 ]

 







posted by 北川商店 at 12:53| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月18日

死国 (坂東真砂子/角川文庫)



・オカルト要素ありの愛憎劇

・四国の文化についてはあまり深く突っ込んでいない

・女性視点の性的なモノローグなどの描写あり

おススメ度:★★☆☆☆


【ネタバレあり注意】

四国にある八十八ケ所の霊場を死んだ者の歳の数だけ逆から回ると死者が甦えるという、本来は禁じられている「逆打ち」を行った恐怖の物語……という、物語の導入本の裏の紹介から想像できる程度のネタバレだが、気になる方は以下は読まずに、実際の読書をお勧めしたい。

その昔「猫殺し」の一件で話題になった坂東氏による映画化もされたこの「死国」は、死者の甦りと四国の土着文化をテーマにしており「伝奇ロマン」と紹介されている。問題はこの「伝奇」と「ロマン」の比重だが「ほとんどロマン」といった感じで、三角関係がテーマの恋愛物になっている。

この三角関係の一角が死人という点がこの本の売りだと思うのだが、正直、ドキドキするホラーを期待していたので、見事に肩透かしを食らった感じだ。また「霊魂が存在する」ことが前提になっているので、少々リアリティを失ってファンタジーにも思える。

死者を蘇らせる話としては「猿の手(Wikipedia)」という有名なお話があるが、基本的にこの手の話は、死者への切ない思いと冒涜行為が交錯して悲劇的な結末を生む、というのが基本的なプロットで、多かれ少なかれこの流れを含む。本作もそういった要素もあるが、甦った死者が取った行動が「ヒロインとの男の取り合い」な所が、トホホ感いっぱいで「けっきょく痴話喧嘩かよっ!」と、思わず突っ込んでしまった。

また、作者の個性だと思うが、登場する女性の内面の醜さやあからさまな性的欲求を描写することが多く、嫉妬心や性的なモノローグに何か居心地の悪さを感じる描写も多かった。もう一つの売りの四国の土俗的文化についても、それほど突っ込まれておらず、中途半端感は否めない。期待して読んだだけに、どうにも人に薦めにくい一冊というのが今回の感想だ。





死国 [ 坂東眞砂子 ]




posted by 北川商店 at 09:49| Comment(0) | ★★☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

ガダラの豚(中島らも/集英社)



・学者VS.呪術師の対決を壮大なスケールで描く

・気軽に読める何でもありの傑作娯楽小説

・グロテスクで下品な描写も多い

おススメ度:★★★★☆


学者の一家が日本・アフリカを舞台に悪役の呪術師と戦う。これは、どちらかというとSFに近い内容で、日本推理作家協会賞を受賞しているので紛らわしいが、ホラーやミステリというより超常小説だ。これで主人公たちが少年少女なら完全にジュブナイル小説だが、そこが中島らも。主人公はアル中の中年教授、泥臭い人間描写でかなり読ませる。

新興宗教やアフリカ、呪術やテレビ、アルコール・ドラッグから格闘技まで、恐らく作者が面白いと思った要素が全て叩き込まれている。たくさんのおもちゃを集めて作った遊園地のようでもある。「何かを面白がること」にかけて、人一倍才能のあった中島らもである。面白くないはずはない。ただ、このテーマパークは人間の闇も多く含んでいる。コミカルでありながらどこか居心地の悪い違和感がつきまとう。描写もグロテスクだ。

率直言ってやはりちょっと下品でもあり、読後に芯に来る感動というものもない。読んでいる間はずっと「面白がれる」小説であることは間違いないが、小説的にはちょっと構成が歪だったり、キャラクターが変人過ぎる気もする。その辺も含めて「中島らもが好きかどうか」によって評価が分かれる。

ご存知の通り著者は泥酔の上、階段から転落したことが原因で亡くなられている。本書にもドラッグ等を肯定的に捉える描写があったり、そもそも主人公がアルコール中毒だったりする。一方で、プロレスなど著者が好きだった娯楽も設定として生きていて、何だか少し哀しい感じもする。恐らく著者は、生きることに常に苦しんでいたのではないだろうか。

とにかく、色々闇の深い部分は感じるが、かたい事は言わずに気軽に楽しめる、そんな小説である。



 

 

 

ガダラの豚(全3巻セット) [ 中島らも ]





posted by 北川商店 at 14:10| Comment(0) | ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。