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2017年02月13日

夜市(恒川光太郎/角川文庫) 〜簡単なあらすじとレビュー



・謎の露店が並ぶ「夜市」を舞台にした幻想的な短編。もう一遍「風の古道」も収録

・短い話に綺麗な伏線とその回収があり、不思議な読後感

・霊や殺人鬼が出てくるホラーとは系統が違う。下記参照

おススメ度:★★★☆☆


タイトルの「夜市」は、第12回日本ホラー小説大賞受賞作である短編小説。もう一本「風の古道」も収録されているがそちらの方が若干長い。本当に短いお話で、30分もあれば最後まで読み切れるような分量だ。

あらすじは、いくつもの世界が交わりあい奇妙なものばかり売られている「夜市」に大学生の裕司と友達の女性のいずみが向かうところから始まる。「夜市」はいわば異空間で、そこでは買い物をしないと出られないというルールがある。売っている商品は「何でも切れる刀」「若返り薬」など奇妙な者ばかり。裕司は昔、ここで「あるもの」を売って帰ってきたのだが、今回の目的は「それ」を取り戻すことだった……。

作風は非常に幻想的で、ホラー的な部分もあるが、ファンタジーや幻想譚に分類されるような内容だ。私は宮沢賢治の作品(グスコーブドリの伝記など)を少しイメージした。短い中にも様々なドラマが埋め込まれており、柔らかい文章で非常に読みやすい。ただ、リアル系ホラーと思って読むと肩透かしを食らうので、あくまでも現代的な寓話として読むのがいいだろう。

もう一遍の「風の古道」も花見会場で迷った7歳の少年が不思議なおばさんから「この道を行けば家に帰られる」と教えられ無事に戻るが、後年、またその道を通ることになって……という導入で始まるエピソード。夜市と同じような半分夢で半分現実のような作風は同じ。ただ、やはり「夜市」の方がインパクトが強いように思う。

怖いかどうかというとさほど怖くはないが、何だか不思議で美しいこの作品でしか味わえない読後感があるので、幻想的な物語が好きであれば、一読の価値はあると思う。





夜市 [ 恒川光太郎 ]







posted by 北川商店 at 09:50| ★★★☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月12日

妖怪始末人トラ・貧!! 2 (魔夜峰央/秋田文庫) 〜解説と「胴面(どうのつら)」のあらすじ



・基本はパタリロと同じノリのギャグマンガ

・頼りない二人(トラちゃんと貧乏神)が妖怪退治をする一種のヒーローもの

・胴面は胸糞の悪い話として有名。それ以外は全編ギャグ。

おススメ度:★★★☆☆


日曜日なので、少し肩の力を抜いてコミックの紹介をしてみたい。ジャンルはギャグマンガで、あの「パラリロ」で有名な魔夜峰央氏の作品だ。タイトル通り妖怪始末人の7歳の虎馬猫太郎(トラちゃん)と貧乏神のコンビが悪さをする妖怪を退治する話で、基本的には「パタリロ」などと同じノリのギャグマンガだ。

で、なぜこの2巻かというと、ネットでも「胸糞の悪い結末の漫画」として、よく紹介されている「銅面(どうのつら)」というエピソードが収録されているため選んでみた。実はこの「トラ・貧」は「妖怪始末人トラウマ!!」の続編のシリーズであり、元のシリーズに比べるとシリアス度が若干上がっているが、この話だけは段違いに「むごい」話だ。

あらすじはこうだ。子供ばかりが妖怪によって殺される事件が発生。トラちゃん達の所属する「妖怪始末人ギルド」がその妖怪に賞金を懸けた。トラちゃんと貧乏神は、聞き込みを開始するのだが、心当たりのある青年と出会う。調査をするうちに、トラちゃんはその青年をお兄さんのように慕うのだが、妖怪「胴面」は人間に擬態する能力があり……という流れになっている。結末はあえて書かないが(ネットで調べれば多分出てくる)、トラちゃんにとって非常に辛い結末となっている。確かに「胸糞悪い」話だ。

個人的には、ギャグマンガの中に急にシリアスな話が混ざるのは嫌いなので、シリアス要素のない前シリーズの方が好みだが、この後4巻で登場する座敷童の「童子(わらしこ」というキャラクターが中々可愛いのでお勧めだ。前シリーズには浦原瀬奈可(うらはらせなか)という背中に口がある始末人も出てくるが、こちらは余り可愛くない。結構好きだが。

どちらにしても、上記のエピソードを除けば基本は愉快なギャグマンガなので「パタリロ」などのノリが嫌いでなければ、このシリーズを初めから読まれるのがおススメだ。







妖怪始末人トラ・貧!!(2) [ 魔夜峰央 ]

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posted by 北川商店 at 08:00| ★★★☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月11日

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (スティーブン・キング/新潮文庫)




・「ショーシャンクの空に」の原作「刑務所のリタ・ヘイワース」を含む中編2本を収録

・映画の追体験に最適。ただし、ラストのニュアンスが微妙に違う

・もう一本の「ゴールデンボーイ」は割と地味なナチスものサスペンス。

おススメ度:★★★★☆

映画好きの方にはもはや紹介するまでもない大傑作「刑務所のリタ・ヘイワース」=「ショーシャンクの空に」の原作が収録されている一冊だ。タイトルが「ゴールデンボーイ」なのでややこしいが、つまり2本の中編が収録されているということだ。

まずは「刑務所のリタ・ヘイワース」。映画を観た方なら一目瞭然のあるアイテムの名前なのだが、一応、あらすじを簡単に説明すると妻殺しの冤罪で投獄された銀行家が刑務所で様々な経験を積み、最後には脱出を図るというもので、これだけでは凡百の脱獄もののようにしか思えないが、そこがスティーブン・キング。様々な印象的なエピソードと所々にある残酷描写で読み手を引き付ける感動作だ。

映画と比べてどうかと聞かれれば、ほんとんどそのまま。映画のシーンが目に浮かぶようだ。ただし、ラストシーンは微妙な差がある。個人的には映画のラストシーンは最高の名シーンだと思うので、ラストだけなら映画版が好みだ。この辺は一度読んで確認を。そういえば同じキングの映画「ミスト」も結末が大きく変わっていた。

もう一本の「ゴールデンボーイ」のあらすじは、13歳の少年が、偶然、近所に住む元ナチスの戦犯と思われる老人との交流を描くいわゆるナチスもの。上記の「刑務所のリタ・ヘイワース」に比べるとこちらは悲劇で、派手なシーンもないのだが、見所もあるので、続けて読んでみると面白いだろう。文庫版の分量でいえば、「刑務所のリタ・ヘイワース」は162ページ、328ページとなっており、「ゴールデンボーイ」の方が約2倍長い。タイトルが「ゴールデンボーイ」なのもその為かも知れない。

ちなみに副題が「恐怖の四季 春夏編」となっているが、秋冬編ももちろんあり、あの「スタンド・バイ・ミー」ともう一本の話が収められている。





ゴールデンボーイ改版 [ スティーヴン・キング ]




posted by 北川商店 at 08:00| ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする