・疫病による「崩壊後」の世界に現れる善と悪の組織が描かれる
・初登場の人物が多い、宗教観が強く分かりにくい等の理由で前半はややダレる
・中盤からは再びスリリングに。キング節全開のエピソード満載
おススメ度:★★★☆☆
疫病でほとんどの人間が死んだアメリカを舞台に、生き残った人々が善と悪に別れそれぞれの思惑と葛藤をじっくりと描く長編小説の第3巻。連続した物語の紹介なので、以下は、2巻までを読まれたという前提で紹介したい。未読の方は「ザ・スタンド(1)」「ザ・スタンド(2)」の紹介をご参照下さい。
2巻までの流れが、疫病で人間が死に絶えていく世界のリアルな過程と、生き残った人々の出発を描いたものだとすれば、3巻でははっきりと方向性が転換する。第3巻では、宗教的なテーマに基づく「善」と「悪」のリーダーの登場と対立、それぞれに「仲間」として集まってくる人々の様子が主に描かれる。
特に最初は「善」側の108歳の老女の描写が続くのだが、これまでのキャラクターが登場せずに長文で展開されるので、少々読むのが苦痛になる。しかし、ここを飛ばすと後の話の深みが無くなるので、物語としては絶対に必要な部分だから仕方ないのかも知れない。
中盤からは派手なシーンも増え、娯楽小説として断然面白くなる。特に全編通して最も強烈な印象を残す「ザ・キッド」の登場シーンは必読だ。一言でいえば、短気でチビのギャングだが、作中では唯一「関西弁」で話す。人によって評価は分かれるだろうが、実に最低で魅力的なキャラクターになっている。彼の口癖「信じるか? このご機嫌なごたくをよぉ」は思わず真似たくなるだろう。
後半は主に「善」側である<フリーゾーン>でのゴタゴタが中心になるが、だんだんと人格が崩壊していく二人の登場人物が面白い。一人は想像がつくが、もう一人が意外でこの先の展開が気になる「仕掛け」になっている。そして、最後に一つの決断が下されるのだが、その決断の結果、使命を与えられる3人にも注目だ。
第3巻は、少々中だるみを感じるシーンもあるが、面白いエピソードも多数ちりばめられている。物語としてはちょうど中間地点、一度仕切り直されると思ってじっくり楽しみたい一巻だ。
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