・表題作ほか、4つの短編を収録
・ホラー要素よりファンタジー要素が強い
・独自の世界観とどこか暖かい読後感
おススメ度:★★★☆☆
収録の順番でいえば、和風メデゥーサの話を描く「意志の目」、一種の幽霊譚となる「はじめ」、不思議なぬいぐるみを描く「BLUE」、そして表題作の「平面いぬ。」が続く。
「平面いぬ。」の導入は、ひょんなきっかけで、少女が謎の中国人に犬のタトゥーを入れてもらう所から始まる。その犬は「ポッキー」と名付けられるのだが、実はどうやら「生きて」いるようで……という感じで、家族の不幸と直面する少女の気持ちが描かれている。
乙一氏は奇抜なアイデアを形にする作風であるようで、ファンタジー・ホラーとなっているが、どれもホラーと言うよりファンタジーに近い。怖がらせるというよりは、不思議がらせる、かつ、心に暖かいものを残すようなそんな作品が多い。特に「BLUE」にその傾向がつ用ように感じた。文庫の裏には「天才・乙一」と書かれているが、確かに論理を積み上げる秀才タイプの小説ではなく、誰もが考え付かないネタを作品にする作家だと思う。
結局、怖い話としては、別に怖くないので、特別おススメはしないが、著者独自のテーマと文章には、確かに他の作家にはない「何か」があるので、好きだと思う人はトコトン好きになるタイプだろう。「平面いぬ。」のアイデアは、ちょっと改変すれば長編としても機能するんじゃないかと思った。
蛇足:著者は1978年生まれということで、確実にアレ「根性、根性、ど根性〜」を知っている世代だと思うので、私もそれを思い浮かべた。カエルや犬もいいが、美少女など彫ってはどうかと思うが、そうすると中島らも氏の「昔般若を掘った老人が、歳をとると(皮膚がたるんで)恵比須様になった」という話を思いだして、やっぱりその案もよくないと思った。
![]() 平面いぬ。 [ 乙一 ] |

