・読後感に何も残らない。
・ディストピア風だが、ちゃちな感じしかしない。
・なぜこんなものを著したのだろうか。
おススメ度:★★☆☆☆
(あらすじ)何らかの「災厄」に見舞われた後、鎖国状態の日本で、死を奪われた老人は不幸に暮らしている。やがて少年と出会い海外へ旅立つ運命に……(以上、きうら追記)。
2014年刊行。おそらく震災後の日本を舞台にしたと思われます。かの国は鎖国中であり、死ねない老人がいつまでも罪を背負うかのように、生き延びている。この設定はそれに苦しめということなのでしょうか。汚染された土地、外来語の使えない状況、などなどその他の設定自体は安直です。それでも話が面白ければいいのだが、まったく面白いところがない。文学だろうとなんらかの面白さがなければいけないと思うのですが。
現代日本の状況を寓話として批判的に書こうとしているのでしょうが、ありきたりな批評性のせいで、発想がうまく活かせていないような気がします。一体何を書こうとしているのかというと、おそらく風刺小説の類いでしょうが、ひねりがなくて安っぽくて味気ないものになっています。豆腐味のガムをひたすら噛んでいるような、そんな感じです(豆腐はおいしいですが)。
何故こんなものを書いたのでしょうか、もしかしたら私が読み取れてないものがあるのかもしれません。難しく考えずに素直にそのまま受け取ればいいのか。それとも根本的な問題として、多和田葉子の作風にこのようなテーマは合わないのでしょうか。どなたかにでも読み方を教えて貰えたら有難いのですが。
もし他人に「何か面白い本ないか?」と訊かれても、本書を薦めることはまずないでしょう。
(成城比丘太郎)
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