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2017年04月07日

千と千尋の神隠し(宮崎駿/スタジオジブリ) 〜あらすじと軽いネタバレと怖さの構造



・いわずと知れた摩訶不思議な和風ファンタジーの傑作

・ホラー要素満載で悪意しか感じない展開

・しかし「超」天才の限界を感じる作品

おススメ度:★★★★✩


「君の名は」や「アナ雪」や「タイタニック」を足蹴にする歴代興行収入308億円のいわずと知れた宮崎駿最大のヒット作。老若男女知らぬ人はいない程の超メジャー作品だ。なぜ今これを? と、聞かれれば自分の娘が異様にこの映画を怖がるので、その構造と辛口批評を展開してみたい。

(あらすじ)説明不要、では意味がないので概略を。普通の小学生の女の子「千尋」が、引っ越しの途中、父親の暴走で、神様が集まる娯楽施設に迷い込む。両親は豚にされ、千尋は名前を奪われて「千」になり、まるで娼館のような風呂屋で強制労働させられる……元の世界に帰られるか? というのはご存知の通り。

この映画、最初から最後まで、宮崎駿先生の悪意が満ち満ちている。父親の表情や孤独な千尋の境遇から始まり、両親を豚に変え、人間が最も醜い瞬間の一つ「大喰らい」シーンをぶち込み、未成年の少女を娼館の暗喩としての風呂屋でこき使う。しかも、客はキモイ神様やオタク、上司は業突く張りの鬼婆、唯一の助っ人もすぐにケガをしたりして頼りにならない、高いところから落とそうとする……。

そりゃ、小学生が見たら怖がるのは当たり前だ。この大人の悪意満載の映画を撮った宮崎先生は何を考えていたのだろうか。小学生にストーカーする行為とか、宮崎先生以外が映画にしたら、絶対に世の「保護団体」から抗議の嵐が来るだろう。これをビューティフルと言って見ている外人の気持ちもよくわからない。

そもそも、ストーリー自体は破たんしているし(なんだあの最後のクイズ番組みたいなシーンは)、テーマもキモイ、千尋もかわいくない(ある意味リアルなロリータ)、これを面白く見せて、歴代興行収入ナンバーワンを打ち立てる宮崎先生は化け物だ。全ては人類最強と言ってもいい「アニメの演出力」で、押し通したのだ。動きだけは天下一品。でも、それだけだ。私は、映画館で初日に見たとき「宮崎駿は終わった」と、思った。理由は、こうだ。

釜じいのシーンに出てきたキャラクター「ススワタリ」。そう、これはトトロにも出てくる印象的なキャラなのだ。お分かりだろうか。決して同じネタを使わなかった天才が、過去の作品から「引用」してしまったのだ。これを衰えと言わず何と言おう。ここまでは、多少テーマはかぶっても(もののけ姫≒ナウシカ)、違うテーマを撮り続けてきたのだ。それをやってしまった。あの釜じいもラピュタの爺さんにそっくりだ。

やってしまった。ついに宮崎駿は弱音を吐いた。いちファンとしてそう思った。

その後「ハウル」「ポニョ」「風立ちぬ」と来たが、予想通りの出来栄えだ。あそこが天才の分水嶺だったのだ。ただ、その演出力は並のアニメーターの何百倍もあるので、今から映画を撮っても絶対面白いだろう。力の絶対値が違いすぎる。ただ、もう「旬」ではないのだ。

前は新作を期待していると書いた。それは本音だ。だが、もう「ナウシカ」や「ラピュタ」「トトロ」を超えないだろうということも、ほとんどの方は薄々知っているはずだ。

ホラー映画としては深みがあるので、もし観ていない方(今生まれた赤ん坊とか)は、観られる環境なら見てみてほしい。決して、損はしない「怖さ」「悪意」が感じられるだろう。
(きうら)





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ラベル:宮崎駿 アニメ
posted by 北川商店 at 09:00| ★★★★☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする