ヒジョーに古い漫画のお話なので、ネタバレありきで、短いコラムを書いてみたい。
少し前に、小説を読んでキャラクターの死に動転し、無意味に歩き回った経験が2回あると書いたが、実はもう一つある。それが本作、あだち充の「みゆき」のラストである。今でも活躍されている漫画家だが「タッチ」や「H2」などに隠れて今一つ知名度が低い気がするがこんな話だ。
ある時、母親を亡くして一人暮らしをしている高校生・若松真人のもとに、6年ぶりに異母妹の「みゆき」がやってくる。一応、父親はいる設定だが、ほぼ、二人暮らしで話が進行する。そして、若松真人には同じ「みゆき」という名前のガールフレンドがいるのである。妹のみゆきは活発で天真爛漫、彼女のみゆきは、超がつくお嬢様タイプである。
話の中身は、よく考えると疑似近親相姦もので、危ない領域に踏み込んでいると思うのだが、そこはあだち充先生である。非常に軽いタッチで、「みゆき」と「みゆき」の間を揺れ動く真人の学生生活をコミカルに描いている。そこには深刻な問題は存在しないし、男子中高生が楽しめるようなちょっとだけエッチな要素がちりばめられている。むしろ、「タッチ」などと違って、全編通して明るい作品である。
それだけに、ラストの衝撃は忘れがたい。以下ネタバレです。
12巻あるラストで、主人公の若松真人は、妹の「みゆき」の結婚式に、兄としてスピーチするのであるが、あろうことか「妹のみゆき」が好きだと告白し、その結婚式をぶち壊すのである。一応、それなりの伏線はある。ただ、それまでの和やかなムードが一変、直接的な描写はないものの「驚愕の修羅場」だ。その時思ったのは、
「彼女のみゆきが可哀そうだ!」と、いうやりきれない気分だった。
で、思わず、家を飛び出し、衝撃のあまり町をさ迷ってしまった。客観的には、私は完全な馬鹿者だが、楽しいラブコメを読んでいたら最後の最後で崖から突き落とされた気分だった。私は優しい彼女の方の「みゆき」の方が好きだったのかも知れない。
と、まあ、どうでもいい話であるが、ラブコメでここまで衝撃的なオチが待っているとは(当時の)私は想像もできなかったので、今でもトラウマとして深く心に残っている。
ちなみに、アニメ化もされていて「大人の階段のぼる、君はまだシンデレラさ」と歌う、H2Oの「思い出がいっぱい」の方が有名かも知れない。オープニングの「10%の雨予報」もいい曲で、後に珍しくCDを買い求めた記憶がある。今見たら、ちゃんと手元にCDが有った……。
その後、ラブコメを含むギャグ系マンガを読むときはラストに豹変しないか注意している。
(きうら)

