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2017年10月13日

一握の砂(石川啄木/新潮文庫)〜シリーズ読書メモ(9)



・その私生活を知っても心に迫る詩

・究極の自己愛≒他者への愛

・鎮痛剤として。

・おススメ度:★★★★★


「いと暗き/穴に心をすわれゆくごとく思いて/疲れて眠る」

気分が落ち込んだ時は、暗い気分の曲を聴くといいという。同じ境遇の人間がいることによって共感し、安心を得るからだろうか。自分にとって啄木の詩は、そんな鎮痛剤のようなものだ。

「かなしきは/飽くなき利己の一念を/持てあましたる男にありけり」

今では良く知られているが、啄木の私生活はまるで滅茶苦茶だった。金遣いが荒く、芸者に入れ込み、家庭を顧みなかった。有名な「ぢつと手を見る」詩も、清貧の生活から生み出されたものではなかった。

「こころよく/人を讃(ほ)めてみたくなりにけり/利己の心に倦めるさびしさ」

たぶん自分の破滅的な性質を心得ていたのだろう。それでもブレーキは効かなかった。それでこんな短歌を詠んでしまうのだ。

「非凡なる人のごとくにふるまへる/後のさびしさは/何にかたぐへむ」

十分に非凡だった。2017年の自分の評価を知ったら、石川啄木はどう思うだろう。ほとんどの詩人よりはるかに詩集が発行され、繰り返し読まれ、教科書で無数の若者たちが学んでいる。

「誰が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕(ゆうべ)」
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買い来て/妻としたしむ」
「ふるさとの訛なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きに行く」


その気持ちは良く分かる。自分に才能がある(はず)なのに、一向に社会的には評価されない。生活も友人の文豪に比べれば楽にならない。そりゃ、卑屈にもなるだろう。この鬱屈した気分の中で、できることと言えば、短歌だけ。しかも、それはお金に直結しない(金になるはずの小説も書いているのに、一般にはほとんど知られていない)

「ふるさとの山に向ひて/言うことなし/ふるさとの山はありがたきかな」

と、言いつつ、

「ふるさとの/麦のかおりを懐かしむ/女の眉にこころひかれき」

などと書いたりしてるのに、

「わが妻に着物縫はせし友ありし/冬早く来る/植民地かな」

ともかく。村上春樹ではないがいやはや。でも常にこう思う。

「こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂げて死なむと思ふ」

あるいは、

「何かひとつ不思議を示し/人みなおどろくひまに/消えむと思ふ」

と、ならないものか。そう思ってちくま文庫版の関川氏の解説を読んでいるとこう書いてあった。

「職業は、夢想を本職とし」「代用教員を副業につとめている。本職の方からは一文の収入も無いが」副業では八円の月給を得ている、と『林中書』にはある。(石川啄木/ちくま日本文学全集/解説より)引用


これはダメだな。ダメだけど私はやはり好きだな。

啄木は明治45年4月13日、困窮の果てに借家の中で、結核により没した(享年26歳)。

(きうら)









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2017年07月16日

新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (J.R.R. トールキン (著)/田中明子 (翻訳)/評論社文庫) 〜あらすじと感想



・現代ファンタジーの元祖ともいえる偉大な名著

・弱きものが勇気で悪を撃つ感動の物語

・「読みにくさ」は万人の認めるところ

・おススメ度:★★★★★


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一般的には、映画「ロード・オブ・ザ・リング(Ama)」と知られる物語の原著。所版はイギリスで1954年に刊行されているので、2017年時点で53年も前の作品となる。しかし、紛れもないファンタジー小説の名著で、それまでバラバラに散らばっていたエルフやトロル、ホビットやドラゴンの設定などを再定義し、現在、スマホゲームなどで遊ばれているすべてのファンタジーの礎となっているといっても過言ではない。著者のトールキンは言語学者で、そこに言語体系のある「社会」を創造したことも歴史的な意義が大きい。

→以下、新サイトで。



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2017年07月03日

CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-(期間限定盤)[3CD] Limited Edition 〜ファンからのファンレター



・スピッツの集大成

・この町、いや、奈良で1、2を争うファンであると自称する私

・いつまで経っても「醒めない」歌が続く

おススメ度:★★★★★


もちろん、ファーストアルバムからのファンではない。私もチェリーをとっかかりに、スパイダーや歩き出せクローバーにやられ、渚に心を揺さぶられ、愛の言葉で泣いた、当時の「ミーハー」ファンである。しかし、それから20年。ほぼ毎日、彼らの曲の何かを聴いている。イントロクイズなら9割ぐらいは勝てるはず。「ヒバリのこころ」いや、「鳥になって」や「僕はジェット」をリアルタイムで知っておられる世代からは鼻で笑われるだろうが、一応、ファンを名乗ってもいいのではないかと思っている。

しかし、このスピッツのこの普遍性はどの辺からくるのだろう。私は三つあると思っている。

一つは、不思議な歌詞だ。

「去年の秋に君が描いた/油絵もどきを壁に飾った/カボチャとナスは仲良しだ/それもいいさ(テレビ)」とか「バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日(運命の人)」とか、「雲間から零れ落ちていく神様たちが見える(愛の言葉)」とか、どう考えてもメジャーで歌っている人の歌詞ではない。さらに「僕のペニスケースは/人のとはちょっと違うけど(波のり)」とか「君のおっぱいは世界一(おっぱい)」とか、「ねじれた味のラズベリー(ラズベリー)」とか、あからさまにエロい歌を唄っている。この奇妙でどうとでも取れる歌詞が、何度聴いても飽きない秘訣だ。その時の気分で、解釈を変えられる歌詞。この不思議な浮遊感に尽きる。

二つ目は挑戦的なメロディ。

周りの人に聞くと「何を聴いても全部スピッツ」と、よく言われるが、とんでもない。それは聴き分けるだけ聴いていないだけの話で、最新曲の「ヘビーメロウ」や「1987→」に至るまで、必ず違うコンセプトを曲に仕込んでくる。特に最近では「子グマ! 子グマ!(アルバム「醒めない」収録)」に驚かされた。AメロBメロサビを繰り返すだけの曲の構成をぶった切った名曲。しかも曲も詩も切ない。同じく敬愛する石田ショーキチ氏がプロデュースしたロックに振り切ったアルバム「8823」なんて、「空も飛べるはず」か「夢じゃない」のイメージしかない人からしたら別のバンドに思えるだろう。「メモリーズ・カスタム」など、熱すぎるし、「君を不幸にできるのは宇宙でただ一人だけ」と叫ぶ「8823」はむしろ泣ける。スピッツの30年は正に音楽的冒険の記録だ。

三つ目はその丁寧さ。

シングルにしろ、アルバムにしろ、ライブにしろ、どれも絶対に手抜きがない。「実験曲」はあるが、いわゆる「捨て曲」は皆無だ。個人的に苦手なのは「春夏ロケット」と「ムーンライト」ぐらい。それでもイントロが脳裏に再生される。たぶん、常に真剣勝負をしているからだろう。比較的不評であったアルバム「小さな生き物」でさえ「オパビニア」を始め、名曲ぞろいだと思っている。彼らはいつも「短めに持ったバット/期待裏切って/エグ過ぎるスライダー/打ち返す(オケラ)」ことを狙っているのだ。

最新曲では、自らをヒーローを盛り立てる雑魚キャラだと、草野氏は歌っていたが、スピッツが雑魚キャラならいつまで経っても一撃で倒され、勇者のレベルは上がらないだろう。「チェリー」を深夜のローソンのバイトで聴いた時は、まさか20年たっても聴いているとは思わなかったが、事実だから仕方ない。本当は全部のアルバムを聴いてほしいところだが、初期作品でも既に完成されているので、「夏の魔物」や「魔女旅に出る」、最近の名作「ルキンフォー」や「さらさら」も楽しんで欲しい。この3枚組でこのプライスは大サービス価格だ。尤も私にとってはジャケットと最新の3曲の音源を手に入れる目的が主だが……。

この新曲を聴く限り、スピッツはまだまだ続いていくのは間違いない。

「任せろ/醒めないままで君に/切なくて楽しいときをあげたい」スピッツに期待は膨らむばかりだ。

(きうら)



CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX- (期間限定盤 3CD) [ スピッツ ]



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