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2017年04月29日

映画版無限の住人(三池崇史監督/木村拓哉主演)



・不死身の男と少女の剣戟時代劇

・今すぐ忘れたいので、本当は感想を言いたくありません。

・でも、約束なので、ちゃんと書きます。


この映画を見に行く前の気持ちを物語風に描写します。

(洞窟の中で出口へ逃げる途中、多数の虫型エイリアンの追っ手の気配)
「ここは俺が守る。だからお前は先に行け!」
「でも、それじゃヒロシは死んじゃうよ」
「黙って行け!」
「嫌よ! 私も戦う!」
「……ヨシコ、お前の腹の中にはあいつの子供がいるんだろ?」
「……ヒロシどうしてそれを⁉︎」
「ハハハ、俺は分かってたんだ。本当にお前が好きなのは俺なんかじゃなくて、タケシだって。俺が死ぬ程憎いあいつを、お前はやっぱり愛してしまったんだろ」
「でも、でも」
「でもはいらねぇ。俺はとんだ勘違い野郎の道化者だったってだけさ。ただ道化にも意地はあってね。惚れた女は命をかけて守ってやるさ」
「やっぱり嫌よ! そんなの!」
「聞かねえ女だな。俺が惚れただけのことはある。じゃあこいつはどうだ。お前はその赤ん坊までこの愚かな戦いに巻き込むつもりか?」
「それは……ううう」
(バッタに似たエイリアンの最初の一匹が現れて、ヒロシはそれを撃ち殺す)
「時間がねぇ。早く決断しろ!」
「……分かった。ユージたちを呼んでくるから、絶対死なないでね!」
「約束する! 行け!」
「必ず戻るから!」
(数10秒後、多数の虫型エイリアンが登場。ヒロシは銃を構えてツバキを吐く)
「よう、皆さんお揃いで。寄ってたかって俺一匹にご苦労さん。ああ? 飛んで火に入る夏の虫って奴か俺は」
(ヒロシ、ニヤリとして)
「てか虫はお前らの方だろ? ただ甘く見るんじゃねえよ。この世で一番大事なものを守る男とそれにフラれた男の意地ってヤツをな!」
(ヒロシ、銃を乱射しつつ絶叫)
え? 早く映画の感想を書けって?

標準語では「とんでもなく下らない映画」関西風だと「舐めとんのかワレ。おちょくりよったらいてこますぞ。ああん!」英語では「Jesus! mother f*cker!」私の郷里の言葉では「あれっこわい、何やのこのどんならん映画!」。いやはや。

いやはや!

だいたい予想はしていたが、俳優さん達はプロとしての仕事をしようと頑張っている。特にキムタクは頑張っていた。彼はよく「どこにでてもキムタク」と言われるが、それは褒め言葉でもあって、ハリソンフォードもそうだった。演技よりオーラで勝負するタイプ。もちろん演技にケチをつけてるわけではなく、オーラのステータスの方が他の演技や声の質などと比べ高いということだ。

キャラは意外に似ていたし、特に悪役の戸良などはイメージ通り。黒井鯖人なども良く再現した。ストーリーも映画用にアレンジしないといけないのは当然だ。全部丁寧に映像化したら続編が10本は必要だろう。むしろよくまとめたといいたいくらいだ。

で、あの、そろそろ、この仮初めの感想を捨てていいですかね?実はここまでの文章は映画を観る前に書いていたんですよ。あまり外れてない自信があるなぁ。以下が見てからの感想です。

クタバレ三池監督! ちゃんと原作読んでないだろ? どこが面白いのか理解してないだろ? 原作の美学が分かってないだろ? もし分かってやってるなら大した詐欺師だ。でも人を騙すのは良くないぞ。分かってやってないのなら、今後一切、漫画原作の映画を撮るな! 六鬼団が出てこないのはまだしも、よくも乙橘槇絵を原作と百八十度違うキャラに変え、偽一と百琳と阿葉山宗介を無駄遣いし、吐鉤群を腰抜けに改編しやがったな! そもそも無限の住人が閑馬永空以外に殺されかけてどうする! それは無限の住人の根幹を改悪してるだろ!

本当に愚鈍な人だ!

どこが悪いのか5点だけかく。

 1.キャラの見た目だけ似せて中身めちゃくちゃ。戦い方、似せる気もなし。
 2.最初の20分はまだマシ。その後、殺陣シーンが全部単調。
 3.原作者の苦労、全て無視。特にユーモアが殆どゼロ。
 4.途中で話をまとめるのを投げて書くのをやめたひどい脚本。
 5.操作できない作りかけの「無限の住人無双」の長すぎるデモシーンにしか見えない。

映画には多額の資金が必要だ。いわば創造的ギャンブル。保険を掛けたい気持ちは経営者なら分からんでもない。スタジオが潰れたら本当に撮りたい映画も撮れないもんな。だからと言って経済の奴隷になってどうする? やりたくない仕事にもクリエーターとしての一片の意地を仕込むのがプロだろ。それが感じられない映画なんてただの動画だ。

原作を知っている人以外の感想も知りたかったので、「キムタク」「時代劇」で入ったと思われるご年配の人数人に感想を聞いたみた。
「どうでした?」
「いや、まあ、ハハハ」(苦笑い)
会場は4分入りくらい。良く入ったと思う。最後に一言。

ちくしょうめぇ!


(昆虫の死骸に埋まったヒロシの穏やかな表情を見て泣き崩れるヨシコ)
「嘘つき! ヒロシの嘘つき! 生きてるって生きてるって……」
(ヨシコ、更に号泣)
「見ろよ。こいつの顔を。奴は死ぬ瞬間まで守り続けたのさ」
「確かに私たちは守ってもらったよヒロシ」
「違うな。奴が守ったのは別のものさ」
(ユージは寂しげに笑う)
「……お前は大した男だよ」
「?」
(ヨシコ不思議そうに泣き顔でユージを見上げる。ヨシコにズーム)

てか何で映画の感想でこんな余分な文章書いてるんですかね、私。
(きうら)





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2017年04月18日

四日間の奇跡(浅倉卓弥/宝島社文庫) 〜あらすじと簡単なネタバレ、罵倒



・魂入れ替わり系の「感動」的なストーリー

・音楽にテーマを取った作品

・作品そのものよりも「このミス」に猛烈な悪意を感じる

おススメ度:★✩✩✩✩


(あらすじ)脳に障害を負った少女と、ピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇するある奇跡。それは青年を初恋の人と慕う女性がその少女と魂だけが入れ替わってしまうというものだった、4日後にはいったい何が起こるのか?

どこかで聞いたことがあるような設定だが、それはまあいい。ただ、この小説は猛烈にくだらない。今回は罵倒すると書いたから以下、口汚く罵る。これは「童貞野郎が書いた都合の良すぎるキモチノワルイ変態悪ノリ小説」だ。以上。作者及びこの本に感動した人、映画化した関係者の方、反論が有れば受けて立ちますよ。

ただ、それ以上に腹が立つのが「第1回『このミステリーがすごい!』大賞」が金賞を与えたことだ。当時(2004年)に純真な心でこの小説を期待して読んだ私は、煽り文句とのあまりの落差に怒りを覚えた。どんなにくだらない本でもたいていは笑って済ませるが、これは本当に瞋恚に燃えた。

当時買った本の帯にこうある。「感動の涙が止まらない。魂の救いのファンタジー」「この本に出合えてありがとうと言いたい」。人を馬鹿にするのも大概にしろ。美男美女、しかも障碍者でロリコンだって? こんな下種なネタを引いてきて感動できるかスットコドッコイ。これのどこがミステリーだよ、言って見ろ! エボシ御前(もののけ姫)の言葉を引けば「賢しらに僅かな不運を見せびらかすな」だ。

だいたいこれはSF要素のある至極単純なラブストーリーだろ。最初からそう言えば何も文句はない。出来はいいとは思わないが、笑って済ませて納得する。でくの坊と醜女のラブストーリーなんてこっちから願い下げだ。自分に見る目がなかったのも悪い。ただ、この本をこういった手法で読者を「だまして」売った野郎には心底腹が立つ。私がこんなちっぽけなブログで煽ったわけじゃないんだ。もっと選者としてのプライドはなかったのか? それとも本当に無能だったのか?

Wikiによると127万部も売れているそうだが、これが「売れているけど面白くない本」の代表の一つだ。ただ、だ。私はそう思うが、そう思わない人も多数いるだろう。それは認める。逃げるつもりは毛頭ないが、個人によって感想は変わるのは当たり前だ。例えば「若い無知な恋人と自分を好きな別な女性がいる将来の夢を失った美しい男性ピアニスト」が読んだら感動するかもしれない。

このできごと以来「江戸川乱歩賞」など昔からある賞を除き「何々大賞(たとえば、本屋大賞など)」を一切、信用しないことにしている。私は直接、人に薦められたらその本は必ず読む。だが「経済的な理由で」本を薦めてくる人間は絶対に信用しない。面白い本を探すのは難しい。だが、私は自分の目で見て、テーマと作者の実績を鑑み、数ページ読んで文体を確認して選んだ本は十中八九外さないようになった。後悔もしない。

以上、乱暴な言葉で申し訳ないと思うし、著者に何の恨みもないのだが「第1回『このミステリーがすごい!』大賞」の責任者だけは今でも許せない。お前、商売のためにこんなことしたんだろ?
(きうら)





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2017年04月03日

雀蜂 (貴志祐介/角川ホラー文庫)



・雪山山荘に閉じ込められた男が雀蜂におそわれる

・ワンシチュエーション・サスペンス&ミステリ

・普通の尺度だと凡作、作者としては大駄作

おススメ度:★☆☆☆☆

私は「黒い家」のレビューでも書いたが、作者によってホラー小説というジャンルに目覚めたようなもので、当然大ファンだ。既刊著作はほとんど読んでいると思う。その私から見てこの作品は、超絶駄作だと思う。何か大人の都合で無理やり書かされたのか、ゴーストライターが書いたのか、どっちかだと信じたい。例の「ガンジーが助走つけて殴るレベル」という表現風にすると「蜜蜂マーヤが一生巣に閉じこもっているレベル」のくだらなさ。わかりにくいか。とにかく当時の私の事前の期待値は最高に高かったので「ブルジュ・ハリファ(828.0m)から突き落とされた」気分だった。とにかく、けなすだけけなします。

(あらすじ)大雪の山荘に閉じ込められた小説家が、なぜがスズメバチに襲われて、一人で対抗する。最後にはどんでん返しっぽいものがあるが、もう本当にそれだけ。なぜこれがダメなのか理由を5つ書く。

1.大雪の山荘という安直な設定。何で今さらそんな当たり前な場所を舞台にする? ひねりなさすぎ。

2.主人公が小説家。私小説じゃあるまいし、設定が安直過ぎませんかね、先生。

3.敵が弱い。いくら狂暴と言っても敵は蜂。怖くないよ。アナフィラキシーショックでもない限り、早々死ぬもんじゃないし。まだ、ゴキブリとかの方がキモくてマシだと思う。

4.展開が強引。いくらでも逃げられるのに、わざとやってるとしか思えない。

5.オチが陳腐。こんなの他の作家もさんざんやってる。何を今さら。

もう、当時は貴志祐介は終わったと確信したくらいショックを受けた。その後「新世界より」で実力を見せくれたが「狐火の家」などの凡作も混じるようになってしまった。ホームランを打ち続けるのは難しいし、締め切りもあるだろう。でも、ファンが求めているのは、こんな「誰でも書ける話」じゃない。もっとこう、著者ならではの緻密でグロい世界が見たいんですよ。

以上、偉そうに批判しましたが、あくまでも貴志祐介氏全体のレベルから見ればという評価で、これが新人作家なら、大賞は無理でも何らかの賞を受賞してもおかしくないレベルだと思う。2時間ドラマのオチもこんなもんだし、決して素人小説ではないので、何も知らなければ「普通だな」で終わる程度です。

ただ、何度も書いて申し訳ないが、貴志祐介氏の真の実力ははこんなもんじゃない。連載もされているようだし、期待してます。青春殺人ストーリー「青い炎」やグロくて有名な「天使の囀り」もそのうち紹介する予定です。氏のご活躍を心からご祈念いたします。




雀蜂【電子書籍】[ 貴志 祐介 ]




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