もともとseesaaブログで始めた「怖い本」ですが、独自ドメイン「http://scarybookplus.com/」に移行しました。最近、スマホの広告がウザいとの共同制作者の移行でこのサイトの更新はストップしていますので、ぜひ本サイトへ遊びに来てください。こちらで更新していた内容も本サイトで更新予定です。

2017年01月16日

腐蝕 (竹本健治/角川ホラー文庫)



・ホラー要素のある完全なSF

・ジュブナイル向けの作風

・オチに既知感があるが発表年から考えると妥当

おススメ度:★★☆☆☆


日常生活が何ものかに侵食されていく……という内容の表紙裏の紹介文に惹かれて購入したが、中身は完全なSF作品。宇宙船のエンジニアに憧れる少女が、崩壊していく世界の謎を探る。ホラー要素もあるのだが、一般的なホラーではなく、どちらかというとモンスター物に近い。

想定されている対象年齢は完全な大人というより、中高生ぐらいがではないかと思う。近い雰囲気だと思ったのが、萩尾望都的な漫画のSF世界(11人いる! (小学館文庫)
など)だ。ちょっとテンション高めの会話劇はいかにもである。

目次を見ると一目瞭然だが、途中で話の軸が大きく変わる。ここが一つの大きな山場である。このオチが某有名映画と同じなので、これはSF的には非常にオーソドックス(になってしまった)パターンなのかもしれない。当時の年代で読めば衝撃的だったのかもしれないが、何分30年以上前のSFである。「このパターンなのか」というのが正直な感想だ。

途中の山場までは、幻想的な要素も含め少々退屈だった。作者がやりたいことは分かっているので、「その先」が気になるのであまり集中できない。一方、「その後」は漫画的な内容も含め脱力するのだが、一方でそこそこ楽しめないこともない。書かれた時代はコンピューターが未発達な状態だが、設定がそれ程科学的に精密でないのが幸いして、逆に古くなっていない。

余談だが、角川ホラー文庫で出版されている作品は玉石混交過で「黒い家」や「ぼっけえきょうてえ」のような作品があるかと思うと「呪怨」があったりして、作品の質に大きな開きがある。この作品も、ホラーというには少々苦しいが、年代も考慮すれば、まずまずの作品という所ではないか。







posted by 北川商店 at 11:57| Comment(0) | ★☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月24日

死の泉(皆川博子/早川書房)



・ナチスドイツ、去勢といった興味深いテーマ

・描写が中途半端で、テーマのピントはボケたまま

・感情移入できない登場人物の変態性

おススメ度:★☆☆☆☆

本作の題材は非常に興味深く、ナチスドイツの人体実験、カストラート(去勢)と、危ない予感を感じる要素が満載だが、期待外れの内容だった。上記テーマの描写が実に中途半端だ。こういった小説の場合リアリティが重要なので、核心部分には目を背けたくなるような描写(倫理的に正しいかどうかは別として)がないと、ホラー小説として重みがない。ところが、描写が妙に幻想的というかフワフワしていて、肝心の部分の描写が淡白すぎてガッカリする。

その代わりに、変態(?)ドクターやその妻の心理描写にページが厚く割かれているが、これが全然面白くない。変態すぎて感情移入できないので、読み進むのがかなり苦痛だ。それでも描写が丁寧な1部はいいとして、2部、3部と物語の視点が目まぐるしく変わり、読書の辛さは倍増する。さらに超がつくほどのご都合主義的展開も相まって、ラストは良く分からないまま終わる。

残念ながら常にピントがぼやけた感じが最後まで続く、これがこの作品の印象だった。また、男性の同性愛志向があるのも、好みが分かれるところ。読後の虚脱感は保障できるが……。



 


死の泉 [ 皆川博子 ]

 


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posted by 北川商店 at 12:56| Comment(0) | ★☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月11日

呪怨(大石圭/角川ホラー文庫)



・設定は魅力的だが、リアリティは薄い。

・映像の文章化に疑問を感じる

・小説単体としてはお薦めできない。

おススメ度:★☆☆☆☆


2003年公開の有名なホラー映画のノベライズ版。「介護のボランティアで訪れた一軒家で女子大生が体験する恐怖」という設定が興味深かったので、手に取ってみたが「文字で映画の恐怖表現を再現するのは相当辛い」というのが率直な感想だ。

一例だけ挙げると、どこからともなく猫の声が聞こえるシーンの描写は「ニャ――オ――」。

当たり前だが優れたホラー映画のノベライズ版が、優れたホラー小説ではないということだ。もちろん映画の素晴らしいノベライズ版は存在するとは思うし、映画の追体験用のアイテムとしては有効なのかもしれない。そもそも、もとの映画を知らない人間が小説を読みのが間違っている気もする。

ただ、それでもあまりにも「霊が出る」ことが当たり前なこととして描かれていることが不満だ。ホラー小説を読んでいてこんなことを言うのも気が引けるが、いきなり霊が出てきたらそれはもうホラーではなくギャグだ。そういえば、ダウンタウンの松本人志や漫画家のいがらしみきおが「ギャグとホラーは紙一重」と、言っていた気がする。そういう意味では楽しめないことはない、のかも知れない。素直に映画を観よう。






posted by 北川商店 at 13:41| Comment(0) | ★☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする